2011/06/01

ア・フュー・グッドメン (1992)

A Few Good Men(BD鑑賞)

近作、『ソシャル・ネットワーク』でアカデミー賞の脚色賞を獲得したアーロン・ソーキンが書いた舞台劇をもとに、本人脚色の上、ロブ・ライナー監督で映画化されたのが本作。国内盤BD。仕様は取り立てて良いとも悪いとも思わないが、メイキングは4:3のSD映像。おそらくDVD化の時に作ったものだろう。

お話しはこう。

米海兵隊基地で発生した殺人事件。被害者による不法行為の密告に腹を立てた同僚らによる毒殺として早期の幕引きを図るため、司法取引を得意とし、優秀ではあるものの法定に立った経験もない青二才な主人公に弁護が委ねられる。有罪を認めることで有利な条件を引き出そうとする主人公だったが、被疑者らが有罪を認めることを頑なに拒む。この事件に並々ならぬ関心を示す内部監察官はこの事件の裏に「コード・レッド」と呼ばれる上官からの非公式だが絶対服従の命令が絡んでいると踏んでおり、法定で争うようけしかける。疑惑の証明に足る決定的な証拠を掴めぬまま法廷闘争に臨む主人公らの前に、基地の全権を司る大佐が立ちふさがる。

優秀な法定弁護人だった父親に対するコンプレックスを持っていた主人公が、怪物的な大佐と対峙する試練を通じ、一人前になっていく物語になっている。

主人公がトム・クルーズ、同僚にケヴィン・ポラック、監察官にデミ・ムーア、検察にケヴィン・ベーコン、大佐にジャック・ニコルソン。その側近に今はなきJTウォルシュ。その他基地の海兵隊員の役でノア・ワイリーとかキューバ・グッディング・ジュニアとか、キーファー・サザーランドとか。被疑者のひとりにジェームズ・マーシャル。バーのシーンでアーロン・ソーキンのカメオ出演あり。なかなか豪華。

アーロン・ソーキンが、海軍基地での司法業務経験のある姉の経験から膨らませて創作した軍事法廷劇。通常の法廷と違って、軍隊ならではのしきたりであったりルールであったりが独特で、面白い。

「コード・レッド」ってのは、シゴキというか、カワイガリというか。組織的かつ暴力的な制裁行為。殺された被害者本人からの強い転属依頼が出されていたが、転属の命令を出す代わりにキッチリと根性たたき直してやれや、と命令を出した大佐。しかし、いろんな偶然が重なって、相手が死んでしまう。慌てた大佐らは真相を隠蔽し、証拠も湮滅し、トカゲの尻尾切りをしようと図ったというのが真相。転属命令を偽装し、毒殺を偽装し、フライト記録を抹消し、偽証した。それを以下に証明するか、絶対的権力を持つ上官をいかに追いつめるか。そこが見所。

ちなみに、事件の起きた海軍基地というのは、悪名高きグアンタナモだ。この基地はキューバにある。ここは米西戦争を起源とし、カストロ以前のキューバ政府から米国が「永久租借」したものである。現キューバ政府の立場としては「不法占拠」ということになろう。米国内法もキューバ法も適用されず、軍法だけが適用される治外法権区域だという。

まあ、どうってことのないストーリーではあるが、構成とダイアローグの巧みさ、役者の熱演で最後まで面白く見られる。ジャック・ニコルソンの怪演、クライマックスでの名台詞(I want the truth! に対し、You can't handle the truth! と怒鳴り返すやつ)はつとに有名で、あちこちでパロディにされた。登場してひとことふたことしゃべるだけで場の雰囲気を一変させる迫力は流石だ。周囲の若い役者たちがみな引きずられて、演技のレベルが相対的に上がってるよね。

この映画、面白さの多くがダイアローグによっていることが、日本であまり人気がない理由の一つだろう。字幕や吹き替えじゃ、なかなか面白さが伝わらない。それに、やる気のない邦題な。変に冠詞をとるのは良くないと思うが、だからって、こんなタイトルにするなよ!

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