2011/03/18

正義の行方 C.I.E. 特別捜査官(2009)

Crossing Over (☆☆☆)@WOWOW 録画

ハリソン・フォード出演作としては扱いが小さかったために劇場で見逃していた。考えて見れば、『エアフォース・ワン』あたりを最後に興行的な神通力を失った感のあるハリソン・フォード。「クリスタルスカル」後になる本作ではアンサンブル・キャストの1人、『小さな命が呼ぶとき』ではブレンダン・フレイザーを、公開中の『恋とニュースの作り方』ではレイチェル・マクアダムスを前面に立てての助演と、新しいポジショニングを獲得すべく新機軸を打ち出しつつあるようだ。

で、本作である。米国ならではのテーマである移民を切り口に、中東系、韓国系、メキシコ系、オーストラリア系、ユダヤ系の複数のエピソードが互いに交差していく作りになっている。最近だと、ポール・ハギスの『クラッシュ』を想起させる構成だな。

ハリソン・フォードの役回りは不法移民を取り締まる捜査官で、そういう立場でありながら人としての温情を持っていることであるメキシコ系の女性とその家族に関わりを持っていくことになる。他に、レイ・リオッタが立場を利用してオーストラリアからきた新人女優を手篭めにする話とか、ヘブライ語も分からんのにいんちきユダヤ教徒の話とか、学校の作文で9/11の犯人側に同情的だとされて自爆テロの可能性を疑われる少女の話とか、悪いヤツと付き合っているうちに人生を棒に振りそうになる韓国移民の少年の話とかが綴られていく。クライマックスは、新しく市民権を得た人々を一同に集めてのセレモニーだ。多様なエピソードで移民国家米国の今を描き出す。

真摯な内容でそこそこ面白い。エピソードの結末も深刻一本槍ではないところがいいし、結果としてある種の不条理も感じさせるあたりもいい。ハリソン・フォードは、無口な頑固キャラが板についてきた。レイ・リオッタが相変わらずセコい悪役で、ちょっと可哀想になってくる。『ラスベガスをぶっつぶせ』のジム・スタージェスがなかなか笑わせる。ハリソンの相棒役で登場するクリフ・カーティスに見せ場がある。

脚本・監督は、ウェイン・クレイマー。そうか、そのあたりも脚本家で監督も手がけるハギスの作品を想起させる理由なのかも知れない。製作はワインスタイン・カンパニー。ファイナルカット権を保持していたのに、「短くしないと劇場リリースを見送るぞ」と脅されて20分くらいカットしたらしいが、まあ、2時間でちょうどいいんじゃないのかね。「シザーハンズ」と呼ばれるワインスタインだが、彼らなりの見識というのも一理あるような気もする。