2011/11/28

最強絶叫ダンス計画(2009)

Dance Flick (★)

相も変わらず WOWOW録画で未公開映画の追いかけだ。

原題 Dance Flick、「ダンスもの」というタイトルの、ダンスもの映画のパロディ映画。邦題は、これが "Scary Movie" ウェイアンズ一派の作品であることを示す記号以上の意味はないな。(だって 絶叫=”スクリーム" 計画=ブレアウィッチ "プロジェクト"だし)・・・というか、他の作家のパロディ映画にも節操無く似た邦題をつけてるから、「ナンセンスなスケッチを並べたくだらねぇパロディ映画」の記号ということか。

しかし、このジャンルは死んだね。今世紀に入ってからコンスタントに作品を出しているのはウェイアンズ一派とフリードバーグ&セルツァー組なんだけど、両方とも全くもって面白くないんだもん。ウェイアンズ一派で始まった"Scary Movie"シリーズが、途中で何故かザッカー/プロフト組に先祖返りして「まともに面白い」映画になったことではからずも実証されたように、ジャンルの創始者たる"ZAZ"以降、それを越える才能が出てきていないってことだ。

で、本作。土台になっているのは、可愛気のない顔つきで日本では全く人気のないジュリア・スタイルズ主演の 『セイブ・ザ・ラスト・ダンス (2001)』で、バレリーナを夢見る白人の女の子が、母親の突然の死によって引越しを余儀なくされ、ヒップホップ・ダンスの得意な黒人の恋人と付き合うようになっていく流れに沿って、様々なナンセンス・ギャグやパロディが串刺しになっているというわけだ。

Dance Flick とはいうけれど、「ダンスもの」映画への愛とか尊敬がなさすぎるのがつまらない第一の理由なんだろうな。だいたい、ダンスものをネタにしたギャグも少ないんじゃないか。振付もダンスも酷いもので見ていられない。パロディであればこそ、そこは真剣にくだらないことをやるべきなんじゃないか。それと、ギャグが面白くないだけならともかく、不愉快なのもある。レイ・チャールズの扱いや、ゲイのネタ。いや、ほら、ダンスものなんだからゲイがネタになってもいいよ。"Fame" が "Gay" になるダンス・シークエンスは作品中でも数少ない「面白くなったかも知れない」シーンの一つだとは思うよ。でも、作り手の意識の低さが丸見えだから、笑えるより前に不愉快になるんだ。

ちなみに監督のダミアン・ダンテ・ウェイアンズは、我々のよく知るところのウェイアンズ兄弟の甥、本作の主演デイモン・ウェイアンズJr は名前の通りデイモン・ウェイアンズの息子。け、いつのまにか世代交代が起こってんでやんの。

2011/11/21

アラフォー女子のベイビー•プラン(2010)

The Switch (☆☆☆)

映画では決定打に恵まれないジェニファー・アニストン主演の、ロマンティック・コメディ、じゃないよな、これ。実態は、ジェイソン・ベイトマン主演の変則的な「片思い」映画である。コメディだけど、笑えない話だし、ロマンスだけど、ぜんぜんロマンティックじゃない。

友人以上の好意を抱いていた女性が、年齢を理由にしてドナーから精子の提供を受けて人工妊娠で子供を作ると決意してしまう。施術により妊娠に成功した女性は出産と子育てを理由に田舎に帰ってしまう。7年後、子供を連れてNYに戻ってきた女性と「友人」として再開した主人公は、「友人」として彼女の子供と接するうち、内向的でややこしい性格の子供が、ドナーとなった男に似ていないばかりでなく、むしろ、自分に似ていることに気づく。そういえば、記憶があやふやなんだが、施術の前に、酔った勢いでドナーの精子と自分の精子を入れ替え(=The Switch, 原題)たんだっけ。

本質的には、お互いに憎からず思っていながら、互いの関係を「友人」と定義したがためにややこしい関係に陥る男女が、大きな回り道をしてあるべきところに収まるという話ではある。そこに「人工授精で作った子供」と、「裏の事情」、裏の事情を知らない「ドナー」との関係に深入りしていく女、いまさら裏の事情を話すわけにいかなくなって窮地に陥る男、と、映画ならではの複雑な状況を作り出し、スムーズに流れる話にまとめあげた脚本が秀逸。

人工授精のプロセスで、ドナーの精子を第三者が勝手に入れ替えるなどという無理のある要素を含む設定も、「大きな決断である施術に当たって、勢いも必要だと知人・友人を招いてパーティを開く」、「パーティには医者も招き、そのまま自宅で施術」、「誰のものか分からない凍結精子は嫌なので、自ら募って選んだドナーをパーティに同席させ、直前に新鮮な精子を採取」などの、大嘘・大技を自然な流れの中で連発する力技には脱帽する。しかも、そこまでやってのけて映画の半分、というか、前段に過ぎないのだから大変だよ、これは。アラン・ローブ(『ウォール・ストリート』『ラスベガスをぶっつぶせ』)って、なかなかやるじゃないか。

ジェニファー・アニストンは、いかにもこういう身勝手なことを言い出しかねない「都会で働く自立した女性」像を、嫌な女にみせずに演じていて適役。実質的な主人公を演じたジェイソン・ベイトマンがなかなかうまい。いつも目立たない脇役ポジションで、名前と顔がつながらなかったのだけど、この映画で覚えたぞ。実は子役上がりの大ベテランなんだね。一見爽やかだが、あんまり中身のなさそうな「ドナー」をパトリック・ウィルソン。その他、ジュリエット・ルイス、ジェフ・ゴールドブラム がちょっとした役で出ている。監督はジョシュ・ゴードンとウィル・スペックのコンビ(『俺たちフィギュアスケーター』)。こういう映画が撮れるんだね。びっくり。

2011/11/19

妖精ファイター(2010)

Tooth Fairy (☆☆☆)

ロック様ことドゥウェイン・ジョンソンは、映画界への転身を一番うまくやってのけたレスラーといっても過言じゃあるまい。とりたてて演技がうまいわけではないが、立派な体格で存在感は抜群だし、子犬のような愛嬌があったりする。出演する映画の幅も、かつてのシュワルツェネッガーがそうだったように、アクションとコメディの両方にまたがっていて、なかなか器用なものである。まあ、日本のマーケットではどちらの路線も冷遇されているけどさ。

で、この作品は、ファミリー向けのコメディのほう。『妖精ファイター』、原題は「歯の妖精」。ファイターって・・・・何。

抜けた乳歯を枕の下に置いておくと、「歯の妖精」さんがやってきてコインと歯を交換してくれる、という西洋の言い伝えがありますな。米国ではコイン=クォーター(25セント)が相場だと思っていたら、映画の中では1ドル紙幣だっていうんだから乳歯の値段も高くなったものだ。

ドゥウェイン・ジョンソンが演じるのは、盛りを過ぎたアイスホッケー選手である。この男が付き合っているシングルマザー(アシュレイ・ジャッド)の連れ子に、歯の妖精なんていないと現実を教えようとしたため、妖精の世界に召喚されて「夢を壊そうとした罪」を問われ、1週間のあいだ「歯の妖精」の仕事につくことを強要されるという話なんだな。

この主人公は、ラフなプレイで知られていて、試合中に相手選手の前歯を折ったりするものだから、皮肉なことに「Tooth Fairy」などというニックネームが付いている。そのイカツイ体に童話風の羽が生えてきて本当の「歯の妖精」にさせられてしまい、悪戦苦闘するというのがメインプロット。あの「ロック様」がメルヘンな衣装に身を包み、作り物の羽がピロピロ生えている絵面はなかなかミスマッチ、良い意味で恥ずかしい。

妖精の世界を取り仕切るボスは、なんと、(声だけを除けば)『プリティ・プリンセス2』以来、6年ぶりの出演となるジュリー・アンドリュースだ。1935年生まれだというから、それなりのお年になっているんだが、とても優雅で美しく、貫禄もあり、コメディのセンスもあるんだからスゴい。妖精が仕事をするために必要なガジェットを用意してくれる、いってみれば「007におけるQ」の役周りがビリー・クリスタル。出演時間は短いのに、しっかり笑いをとっていく軽妙な演技と話芸はさすがだ。

単にドタバタに終始するだけでなく、現実的でシニカルな主人公と、恋人の連れ子たち、妖精界の「ケースワーカー」として主人公に付きそう羽のない妖精との関係を積み上げていく中で、なんと、主人公が過去の挫折から再起する物語へと収斂させていく脚本がなかなか秀逸。ローウェル・ガンツとババルー・マンデルっていえば、90年代にビリー・クリスタルやハロルド・ライミス、ロブ・ライナーらとコメディの佳作をものにした脚本家コンビじゃないか。監督はTVがメインのマイケル・レンベック。

2011/11/16

お願い!プレイメイト(2009)

Miss March (☆)@WOWOW録画

主演しているザック・クレッガーと トレヴァー・ムーアが20世紀フォックスからカネを引き出して作った(脚本・監督)は薄笑セックスコメディ。

高校時代に清いお付き合いをしていた男が、プロムの夜のアクシデントで昏睡状態となってしまう。4年後に目がさめてみると愛する清純な彼女はなんと"ミス3月(原題)"としてプレイボーイ誌のカバーを飾っており、赤裸々なセックス体験を語っているではないか。子供の頃からの悪友に引きずられ、プレイボーイ帝国を築いたヒュー・ヘフナー邸で行われるパーティに潜入するために、サウスキャロライナからLAまでの珍道中が始まる、という話。

なんか、本国で公開した時に当たってた記憶があったので見てみた。が、ひでぇーなー、これ。

下世話なコメディは珍しくもないけど、キャラクターに爪の先ほども共感できないんだから困る。特に、主人公の悪友のキャラクターが最悪。ネジの切れたセックスキチガイでもいいよ。でも、『アメリカン・パイ』のスティッフラーだって、ここまで酷いキャラクターじゃなかった。ただの非常識男、トラブルメイカーという枠を超えて、悪人なんだもの。いくら非常時だからって、彼女の顔をフォークで刺して逃げるか?車から路上に放り出された女をそのまま放置するか?昏睡状態の友人をバットで殴るか?これで笑えというほうが無理だよ。

ロバート・ワグナーをヒュー・ヘフナー役にキャスティングして撮影していたのだが、ご本人がラフカットを気に入って出演を快諾したがゆえ、ヒュー・ヘフナー登場シーンを本人出演で全部撮り直したんだそうだ。おかげでロバート・ワグナー(『オースティン・パワーズ』のナンバー・ツーな)は、この救いがたい駄作に顔が残らずに済んだわけだ。

2011/11/09

デート&ナイト(2010)

Date Night (☆☆☆)@WOWOW録画

コメディ好きにはお馴染み、『40歳の童貞男』のスティーヴ・カレルと、「サタデー・ナイト・ライヴ」のヘッドライターも務め、サラ・ペイリンのモノマネでも話題を呼んだ才女、ティナ・フェイが共演するコメディ映画。原題は"Date Night"だけど、邦題はトム・クルーズ主演作にひっかけて、なぜか真ん中に「&」が入っちまうんだな。

2人が演じるのはニュー・ジャージー暮らしの子持ち・共働きの夫婦。仕事に子育てに忙しい毎日だが、ときおりベビーシッターを頼んで夫婦二人の時間("Date Night")を楽しむようにしている。といっても、普段は近所のファミレスで食事したり映画を見に行ったりする程度のことなのだが、ある日、ちょっとした思いつきからマンハッタンで超人気の高級レストランに出かけて特別な夜を楽しもうとしたことから、トラブルに巻き込まれ、とんでもない一夜を過ごすことになるというお話し。もちろん、その経験を通じて二人の絆が一層深まるという定番のストーリー。

気楽に見られて、気持よく笑える良作。主演のこの二人は、普通にしていたら「普通の人」に見えるが、やはり芸達者。「普通の人が、普通でない状況におかれて、普通じゃない行動をとるが、本人達にそれほどだいそれたことをしているという自覚があるわけでもない」という一連の流れに説得力を与え、観客から好感され、過度なコメディ演技に陥ることなくきっちり笑いをとるのって、案外難しいものだよね。二人の相性も抜群で、もはや小手先の「演出」を必要としないレベル。これ一本じゃもったいない、このコンビで何本かやってほしいと思う。

それと、この映画、配役が映画ファン的には豪華。マーク・ウォルバーグ、ジェームズ・フランコ、ミラ・クニス、マーク・ラファロなどが登場。いつも上半身裸のマーク・ウォルバーグが画的に面白すぎる。

監督はショーン・レヴィ。スティーヴ・マーティン主演の『12人のパパ』『ピンク・パンサー』、ベン・スティラー主演の『ナイト・ミュージアム』シリーズ、そして待機中の『リアル・スティール』でコメディじゃないジャンルへも挑戦している。一応、スマッシュ・ヒットが続き、手堅く「計算」できる監督なんだろうが、本作を含めて、あんまり監督の手腕で映画が成功したとまでは思えない作品ばっかり並んでいるんだよなぁ。

2011/11/03

迷ディーラー!? ピンチの後にチャンスなし(2009)

The Goods: Live Hard, Sell Hard (☆☆)@WOWOW録画

進退極まった中古車ディーラーの助っ人として雇われたプロのセールス・チームが先頭に立って、独立記念日の週末にあの手この手で在庫車を売りさばこうとするドタバタ・コメディだ。

作り手のインスピレーションは、ロバート・ゼメキスのデビュー作である中古車屋ドタバタ・コメディ『ユーズド・カー』と、デイヴィッド・マメット原作のセールスマンもの『摩天楼を夢みて(グレンギャリー・グレンロス)』にあるという。ジェレミー・ピヴェン主演(←めずらしい)、ヴィング・レームス、ジェームズ・ブローリン、ケン・チョンなど。製作にウィル・フェレルが絡んでいるのだが、映画のノリはそちらな感じで、かつ、カメオ出演もしている。

米国における「中古車のセールスマン」は、信用出来ない人間の代名詞のひとつ。口八丁手八丁で「レモン(欠陥車)」を売りつけ、売った者勝ちというイメージだな。そんな中古車ビジネスを舞台にしてはいるが、この映画、基本的に中古車セールスマンを揶揄したり貶めるものではない。基本的フォーマットは、万年負け組が奮起して結果を残すという、スポーツ物などに典型的なパターンの話であり、それぞれの立場でそれぞれに頑張っている、少し変わった人間たちへの賛歌である。そこまですっきり爽やかで気持ちよい映画ではないけどな。

笑いのネタも、半分面白く、半分不発。コメディ好きの自分でも、「やっすいマチネー料金で見ている分には許容できる程度」の映画だなと思うんだから、出演者も地味なコメディでそういう出来映えであれば未公開街道まっしぐらも致し方ないか。

ところで、主人公が、現場の士気を高めるために朝のミーティングで「パールハーバー」を例えに出したら、感情が昂ったセールスマンたちが(『ハング・オーバー!』や『トランスフォーマー3』で有名になったアジア系のコメディアン)ケン・チョンをタコ殴りにするというギャグがあった。ケン・チョンの役は日系ですらない、というオチがつく。これ、ちょっと嫌だなぁ、笑えないなぁ、と思って見ていたら、案の定、「差別的」だと日系人のコミュニティが抗議したらしい。

コメディのネタにケチをつけたり、あんまり表現を自粛したりするのは無粋だと思っているのだが、やってよい表現とダメな表現の境界線はなかなか難しい問題だ。

上記についても、毎朝毎朝、「ホロコースト」を例えに出してドイツ系をボコスコにし、「アラモ」を例えに出してネイティブ・アメリカンをズタボロにし、「911」でアラブ系を、「KKK」ネタで有色人種が白人全員を叩きのめし、と反復したうえで、「21世紀になっても進歩のない連中だな」くらいの批評的な台詞でオチをまとめれば、アリだったかもしれない。

要は、作り手が、そこで行われている行為を間違ったことであると認識していることを明確に示しているかどうかなんじゃないか。もちろん、ギャグにしているということは、それが「政治的に」間違っているという認識は示しているのに等しい(ので、あまり目くじらをたてたくない)が、本音ではOKと思っているようにも受け取れるから気分が良くないし、反発も出てくるのだな。あと、特定の人種なり何なりだけをターゲットにするのでなく、様々な事象の中で相対化されているほうが批評性につながると思うんだがどうだろうか。"Avenue Q" の歌詞じゃないが、「誰もが少しだけレイシスト♪」なノリになっちゃえば、不謹慎とはいえ、差別的だとは感じないものだ。