2011/11/21

アラフォー女子のベイビー•プラン(2010)

The Switch (☆☆☆)

映画では決定打に恵まれないジェニファー・アニストン主演の、ロマンティック・コメディ、じゃないよな、これ。実態は、ジェイソン・ベイトマン主演の変則的な「片思い」映画である。コメディだけど、笑えない話だし、ロマンスだけど、ぜんぜんロマンティックじゃない。

友人以上の好意を抱いていた女性が、年齢を理由にしてドナーから精子の提供を受けて人工妊娠で子供を作ると決意してしまう。施術により妊娠に成功した女性は出産と子育てを理由に田舎に帰ってしまう。7年後、子供を連れてNYに戻ってきた女性と「友人」として再開した主人公は、「友人」として彼女の子供と接するうち、内向的でややこしい性格の子供が、ドナーとなった男に似ていないばかりでなく、むしろ、自分に似ていることに気づく。そういえば、記憶があやふやなんだが、施術の前に、酔った勢いでドナーの精子と自分の精子を入れ替え(=The Switch, 原題)たんだっけ。

本質的には、お互いに憎からず思っていながら、互いの関係を「友人」と定義したがためにややこしい関係に陥る男女が、大きな回り道をしてあるべきところに収まるという話ではある。そこに「人工授精で作った子供」と、「裏の事情」、裏の事情を知らない「ドナー」との関係に深入りしていく女、いまさら裏の事情を話すわけにいかなくなって窮地に陥る男、と、映画ならではの複雑な状況を作り出し、スムーズに流れる話にまとめあげた脚本が秀逸。

人工授精のプロセスで、ドナーの精子を第三者が勝手に入れ替えるなどという無理のある要素を含む設定も、「大きな決断である施術に当たって、勢いも必要だと知人・友人を招いてパーティを開く」、「パーティには医者も招き、そのまま自宅で施術」、「誰のものか分からない凍結精子は嫌なので、自ら募って選んだドナーをパーティに同席させ、直前に新鮮な精子を採取」などの、大嘘・大技を自然な流れの中で連発する力技には脱帽する。しかも、そこまでやってのけて映画の半分、というか、前段に過ぎないのだから大変だよ、これは。アラン・ローブ(『ウォール・ストリート』『ラスベガスをぶっつぶせ』)って、なかなかやるじゃないか。

ジェニファー・アニストンは、いかにもこういう身勝手なことを言い出しかねない「都会で働く自立した女性」像を、嫌な女にみせずに演じていて適役。実質的な主人公を演じたジェイソン・ベイトマンがなかなかうまい。いつも目立たない脇役ポジションで、名前と顔がつながらなかったのだけど、この映画で覚えたぞ。実は子役上がりの大ベテランなんだね。一見爽やかだが、あんまり中身のなさそうな「ドナー」をパトリック・ウィルソン。その他、ジュリエット・ルイス、ジェフ・ゴールドブラム がちょっとした役で出ている。監督はジョシュ・ゴードンとウィル・スペックのコンビ(『俺たちフィギュアスケーター』)。こういう映画が撮れるんだね。びっくり。

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