2011/11/19

妖精ファイター(2010)

Tooth Fairy (☆☆☆)

ロック様ことドゥウェイン・ジョンソンは、映画界への転身を一番うまくやってのけたレスラーといっても過言じゃあるまい。とりたてて演技がうまいわけではないが、立派な体格で存在感は抜群だし、子犬のような愛嬌があったりする。出演する映画の幅も、かつてのシュワルツェネッガーがそうだったように、アクションとコメディの両方にまたがっていて、なかなか器用なものである。まあ、日本のマーケットではどちらの路線も冷遇されているけどさ。

で、この作品は、ファミリー向けのコメディのほう。『妖精ファイター』、原題は「歯の妖精」。ファイターって・・・・何。

抜けた乳歯を枕の下に置いておくと、「歯の妖精」さんがやってきてコインと歯を交換してくれる、という西洋の言い伝えがありますな。米国ではコイン=クォーター(25セント)が相場だと思っていたら、映画の中では1ドル紙幣だっていうんだから乳歯の値段も高くなったものだ。

ドゥウェイン・ジョンソンが演じるのは、盛りを過ぎたアイスホッケー選手である。この男が付き合っているシングルマザー(アシュレイ・ジャッド)の連れ子に、歯の妖精なんていないと現実を教えようとしたため、妖精の世界に召喚されて「夢を壊そうとした罪」を問われ、1週間のあいだ「歯の妖精」の仕事につくことを強要されるという話なんだな。

この主人公は、ラフなプレイで知られていて、試合中に相手選手の前歯を折ったりするものだから、皮肉なことに「Tooth Fairy」などというニックネームが付いている。そのイカツイ体に童話風の羽が生えてきて本当の「歯の妖精」にさせられてしまい、悪戦苦闘するというのがメインプロット。あの「ロック様」がメルヘンな衣装に身を包み、作り物の羽がピロピロ生えている絵面はなかなかミスマッチ、良い意味で恥ずかしい。

妖精の世界を取り仕切るボスは、なんと、(声だけを除けば)『プリティ・プリンセス2』以来、6年ぶりの出演となるジュリー・アンドリュースだ。1935年生まれだというから、それなりのお年になっているんだが、とても優雅で美しく、貫禄もあり、コメディのセンスもあるんだからスゴい。妖精が仕事をするために必要なガジェットを用意してくれる、いってみれば「007におけるQ」の役周りがビリー・クリスタル。出演時間は短いのに、しっかり笑いをとっていく軽妙な演技と話芸はさすがだ。

単にドタバタに終始するだけでなく、現実的でシニカルな主人公と、恋人の連れ子たち、妖精界の「ケースワーカー」として主人公に付きそう羽のない妖精との関係を積み上げていく中で、なんと、主人公が過去の挫折から再起する物語へと収斂させていく脚本がなかなか秀逸。ローウェル・ガンツとババルー・マンデルっていえば、90年代にビリー・クリスタルやハロルド・ライミス、ロブ・ライナーらとコメディの佳作をものにした脚本家コンビじゃないか。監督はTVがメインのマイケル・レンベック。

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