Gone Baby Gone (2007) 北米版BDにて
新作 "The Town" の評判が良いということで、ライブラリから買ったままになっていたベン・アフレック実質的な監督デビュー作 『Gone Baby Gone』を引っ張り出してきた。映画好きには『ミスティック・リバー』、『シャッター・アイランド』の原作者として知られているデニス・ルヘインの看板シリーズ・私立探偵パトリック&アンジーものの一編(「愛しきものはすべて去りゆく」)を、ベン・アフレックが自ら脚色し、監督。をを、そうだ。こやつ、そういや『グッド・ウィル・ハンティング』のアカデミー賞脚本家だったねぇ。
舞台はサウス・ボストン。少女誘拐事件が発生し、警察の必死の捜査が続くなか、少女の身内の人間が主人公のところにやってくる。捜索を引き受けることになった主人公らは、街で育った強みを活かして聞き込みをかけるなか、少女誘拐事件の裏には、ヤク中でロクでなしの少女の母親が巻き込まれた麻薬ディーラーとの金銭トラブルが関係していることが分かってくる。警察との密接な連携で麻薬ディーラーたちとの取り引きが実現するところまでこぎつけるが、事件は思いもよらない展開を見せていく。
出演は、私立探偵コンビにケイシー・アフレックとミシェル・モナハン。警察署長にモーガン・フリーマン、刑事コンビがエド・ハリスとジョン・アシュトン。ヤク中の母親にエイミー・ライアン(本作でアカデミー助演女優賞ノミネート)。
これは、日本未公開に憤りを感じるレベルの1級品。もう、幕開けから映画の持つ肌触りが凡百の作品と違うから。
ストーリー展開そのものの面白さは原作に負うものとしても、ボリュームのある原作の骨子を、ドラマの面白さとテーマの重たさを損なわずに、114分というコンパクトな尺にまとめ上げてみせたベン・アフレックの脚色と演出の力は認めなくてはなるまい。(同じ原作者の『ミスティック・リバー』・『シャッター・アイランド』が共に138分だ!) 無駄なく、そしてテンポ良く、しかしサウス・ボストンの地域と人々が醸し出す独特の雰囲気をロケーション撮影で活写したディテイルは豊穣だ。ここらあたりはボストン・エリアで育ち近隣に詳しいこと強みが十二分に活きている。
モーガン・フリーマンとエド・ハリスはその名に恥じない手抜きなしの名演。しかし、本作の驚きはブロードウェイ女優のエイミー・ライアン。舞台となるエリアの下層階級ダメ人間なりきりぶりは演技に見えないレベルで、いったいこの人は何者?と驚かされる。実際、NYはクイーンズ出身の彼女がオーディションのときに話した「ボストン訛り」に騙されたベン・アフレックが「ボストンはどこらあたりの出身なの?」と尋ねたとか、ロケの初日にはセキュリティ・ガードが彼女のことを寄り集まった地元の人間と間違えて現場から締め出したとか、そんな逸話が残るくらいだ。
観客自身に自分だったらどうするかと考えることを要求してくるエンディングで、嫌な後味が残るのは事実。だから観客と体調を選ぶ作品である。虐待、ネグレクト、実の親というだけで、親として相応しくない人間・環境のもとに囚われている子供に果たして希望は、救いはあるのだろうか?主人公の自分の生い立ちを踏まえた判断に納得ができるか?
ベン・アフレックの新作もまた、ボストンが舞台。今度のは北東のチャールズタウンだって。
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