ラベル animation の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル animation の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2010/11/17

ムーラン(1998)

Mulan ☆☆☆★(@ WOWOW録画)

ディズニーが古代中国の伝説を題材に長編アニメーションを作った。中国市場への目配せなどと評されたが、そういう経営判断はあったにしろ、なかなかの新機軸といえよう。

だいたい、男装して戦場にいき、救国のヒロインとなる女の子が主人公である。『美女と野獣』以来、能動的、積極的で賢いヒロインが描かれるようになってきたが、これはその極み。定番のミュージカル要素(挿入歌はマシューワイルダー作)もあるが、ダイナミックなアクション・アドベンチャーの側面もある。なんと、スコアを担当したのは巨匠ジェリー・ゴールドスミスだ。この音楽が「いつものディズニー映画」とは決定的に違う雰囲気をもたらしている。CG技術を導入して描かれた戦闘シーンも、この音楽で迫力倍増である。

中国の話しということで、キャラクターのデザインや美術、背景、アニメーションのタッチにも工夫の跡があり、それっぽい雰囲気が出ている。これは改めて見てみると、かなり力作だと思う。かなりオリジナリティも高い。

子供向けのマスコット・キャラクターとして、幸運のコオロギと、守り神のドラゴンが出てくる。このあたりは典型的なディズニーっぽさが出ているところだが、オリジナル言語版ではエディー・マーフィが声を当てたドラゴンが大人気だった。今回は吹替版で見たが、そこは器用な山寺宏一、雰囲気をうまく掴んでいると思った。

これ、日本ではヒットしなかったね。もったいない。

まあ、米国のスタジオが中国を題材にアニメを作る事にとやかくいう筋もあるんだろうが、日本最初のカラー長編アニメ映画は「白蛇伝」(←中国の説話)だしな。要は、面白ければいいのだ。

2010/11/16

ポカホンタス(1995)

Pocahontas ☆☆★(@WOWOW録画)。

前年に『ライオンキング』を大ヒットさせたばかりの、ジェフリー・カッツェンバーグ指揮下のディズニーが手がけた野心作と呼べる1本である。しかし、英国人のヴァージニア入植にあたって、白人ジョン・スミスと現地人の酋長の娘が恋に落ちたという史実によらない「伝説」を、征服者白人側目線で都合の良い口当たりの良いお話しとして批判的検証精神なしに描いたことから、作品を巡る様々な論争がヒートアップしてしまうという不幸な結果を招いた。

作品として野心的であるというのには、ひとつには自分たちの国、アメリカを舞台とした話に正面から取り組んだということがあるだろう。そして、叙事詩的な作品・物語の性格もある。子供が飽きないようにアライグマやハチドリといったマスコット・キャラクターは登場させているものの、基本は魔法やお伽話が介在しないストレートなドラマだ。

こうしたことを受けて、美術や音楽なども、それなりに気合が入っていて見応えがある。『リトル・マーメイド』にはじまる作品群のなかで、それまでの流れとは少し異なる新機軸が打ち出されたのがこの作品で、それは翌年の『ノートルダムの鐘』、98年の『ムーラン』などに繋がっていく。

一応、現地人やその文化は好意的に描かれ、白人入植者側が侵略者として悪く描かれてはいる(歌詞の中で現地人を差して入植者らが"Savages" 野蛮人と歌うことへの反発など、言い掛かりに等しい。)が、白人側の「悪」を、責任者である総督ひとりに集約・単純化することで矮小化していると感じられる。結局「白人に対して理解のある現地人が良きインディアン」だということになってしまっており、白人にとって都合の良い描かれ方という謗りは免れまい。

このあと、現地人たちは舞台となったような豊かな土地を追われ、土地や権利を騙すようにして取り上げられ、居留地に押し込められていくことを我々は知識として知っている。植民時代の「相互理解」の物語は、だからその残酷な結末まで描かない限りは、侵略者にとって都合の良い物語にしかならない。そこが本作の、本質的な弱みである。

2010/07/17

トイ・ストーリー3

前作から10年を経て作られた、ピクサーの象徴たる『トイ・ストーリー』の続編である。絶対に外さないだろうとは思っているが、さりとてどんな作品になるのかと期待半分・不安半分で待っていたところ、作り手たちは、この10年という月日を、そのまま物語に織り込み、3本をまとめ、ひとつの大きな物語として完結させることを選択したのだった。続編ではなく、大きな物語の終章。

主人公たちの持ち主であるアンディ少年も成長し、大学に通うために家を出るというのが今作の発端である。そして、『2』のときに語られた「玩具と持ち主の関係」、「玩具としての幸せは何か」というテーマを、もう一歩、深くつきつめていく。

・・・まあ、そういう意味で言えば、テーマ的には前作で一度扱ったものの焼き直しである。が、前作で、いつか必ずくるであろう「別れのとき」を覚悟しながら、いったんは持ち主の元に帰ることを選んだ主人公、ウッディが、いよいよ「その時」を迎える話しである、と思うと感慨も深い。

センチメンタルに流れがちな設定だが、そこはピクサー、脱獄ものの要素を取り込んだアクション・アドベンチャーとしてストーリーを練り上げてきた。大技小技から爆笑必至のギャグに至るまで、実によくできていると思う。しかし、その一方、致し方ないことと承知しつつも、「悪役」を必要とする物語の構造は安易だとも思う。まあ、悪役の描き方も前作以上に深みがあって、そういうところに手抜かりがないのもまた、ピクサーの仕事ではある。

一番大きく進化したのは人間のキャラクターの表現。キャラクターのデザインも(1作目、2作目に比べて)可愛くて親しみやすいものへと変わっているのだが、それ以上に、見せ方、演出のレベルが格段に高くなった。本作の肝でもある「別れ」のシーン、まさか、『トイ・ストーリー』なのに、人間キャラクターの「芝居」で泣かされるとは思いもよらなかった。

2010/03/06

『プリンセスと魔法のキス』

2004年のウェスタン・ミュージカル・コメディ『Home on the Range(ホーム・オン・ザ・レンジ にぎやか牧場を救え!)』を最後に伝統的な手描きアニメから撤退してスタジオを閉鎖したディズニーが、久々に復活させた手書き(2D)アニメーション。

アフリカ系の「プリンセス」の登場や、受身ではなく、自ら努力して幸せをつかもうとする主人公像も現代的なのだが、あまり日本のメディアが触れないポイントがある。それは、この映画が1920年代のニューオリンズを舞台に展開されるご機嫌なジャズ・ミュージカルであるということだ!

ご存知のとおり、ニューオリンズという街がハリケーン・カトリーナによって壊滅的打撃をうけたのが2005年のことだ。本作の企画にそれが影響を与えていないわけがない。ニューオリンズと、その土地が生み出した文化に対するトリビュートなのである。なにせ音楽を担当するランディ・ニューマンもニューオリンズ出身で、ジャズにも造詣が深い作曲家なのだ。当初予定されていたアラン・メンケンからの交代は、その意味で絶対的に正しい判断だといえる。

また、ディズニーのプリンセスものといえば欧州などの借り物が常だったところ、米国を舞台に、米国の文化を背景にしている点でも画期的であろう。字幕版は上映回数や場所が限られるが、ミュージカルであるという作品の性格上、大人の観客にはぜひともこちらをお勧めする。