Tooth Fairy (☆☆☆)
ロック様ことドゥウェイン・ジョンソンは、映画界への転身を一番うまくやってのけたレスラーといっても過言じゃあるまい。とりたてて演技がうまいわけではないが、立派な体格で存在感は抜群だし、子犬のような愛嬌があったりする。出演する映画の幅も、かつてのシュワルツェネッガーがそうだったように、アクションとコメディの両方にまたがっていて、なかなか器用なものである。まあ、日本のマーケットではどちらの路線も冷遇されているけどさ。
で、この作品は、ファミリー向けのコメディのほう。『妖精ファイター』、原題は「歯の妖精」。ファイターって・・・・何。
抜けた乳歯を枕の下に置いておくと、「歯の妖精」さんがやってきてコインと歯を交換してくれる、という西洋の言い伝えがありますな。米国ではコイン=クォーター(25セント)が相場だと思っていたら、映画の中では1ドル紙幣だっていうんだから乳歯の値段も高くなったものだ。
ドゥウェイン・ジョンソンが演じるのは、盛りを過ぎたアイスホッケー選手である。この男が付き合っているシングルマザー(アシュレイ・ジャッド)の連れ子に、歯の妖精なんていないと現実を教えようとしたため、妖精の世界に召喚されて「夢を壊そうとした罪」を問われ、1週間のあいだ「歯の妖精」の仕事につくことを強要されるという話なんだな。
この主人公は、ラフなプレイで知られていて、試合中に相手選手の前歯を折ったりするものだから、皮肉なことに「Tooth Fairy」などというニックネームが付いている。そのイカツイ体に童話風の羽が生えてきて本当の「歯の妖精」にさせられてしまい、悪戦苦闘するというのがメインプロット。あの「ロック様」がメルヘンな衣装に身を包み、作り物の羽がピロピロ生えている絵面はなかなかミスマッチ、良い意味で恥ずかしい。
妖精の世界を取り仕切るボスは、なんと、(声だけを除けば)『プリティ・プリンセス2』以来、6年ぶりの出演となるジュリー・アンドリュースだ。1935年生まれだというから、それなりのお年になっているんだが、とても優雅で美しく、貫禄もあり、コメディのセンスもあるんだからスゴい。妖精が仕事をするために必要なガジェットを用意してくれる、いってみれば「007におけるQ」の役周りがビリー・クリスタル。出演時間は短いのに、しっかり笑いをとっていく軽妙な演技と話芸はさすがだ。
単にドタバタに終始するだけでなく、現実的でシニカルな主人公と、恋人の連れ子たち、妖精界の「ケースワーカー」として主人公に付きそう羽のない妖精との関係を積み上げていく中で、なんと、主人公が過去の挫折から再起する物語へと収斂させていく脚本がなかなか秀逸。ローウェル・ガンツとババルー・マンデルっていえば、90年代にビリー・クリスタルやハロルド・ライミス、ロブ・ライナーらとコメディの佳作をものにした脚本家コンビじゃないか。監督はTVがメインのマイケル・レンベック。
2011/11/19
2011/08/26
屋根裏のエイリアン(2009)
Alien in the Attic(☆☆☆)@WOWOW録画
WOWOWの録画でみた、国内劇場未公開作品。親戚と一緒に避暑地にやってきた少年少女が、地球侵略にやってきた少々間抜けな宇宙人の先遣隊と遭遇し、大人の手を借りずに撃退するためにドタバタのバトルを繰り広げる。
子供たちを主人公にした、ファミリー向け(というか子供向け)のアドベンチャーものというジャンルは、おそらくそれなりに作られているのだろうけれども、なかなか日本の劇場では公開されない今日この頃。名の知れたスターもいなければ、ディズニーとかの冠もないのだから、まあ、そういう扱いもむべなるかな、である。
だけど、これ、そこそこ面白いんじゃないのかね。子供向きだと割り切った甘い作りではあるけれど、86分、お約束事も含めてきっちり楽しませる良心的な作りだと思う。ひまつぶしには悪くないよ。
地球侵略とかなんとかいっているのに片田舎の別荘にやってきて子供たちとバトルを繰り広げる小型で間抜けな宇宙人は、どこか「ケロロ軍曹」かなんかに触発されたんじゃないかと思わせるものがある。また、地球存亡の一大事(本当か?)だというのに、大人はあてに出来なくて、子供たちだけで何事もなかったかのように対処しなければならないという筋立てや、その闘いが屋上から地下室まで、一件の家の中だけで完結するという発想は、藤子F的な裏庭SF風だったりもする。しまいにゃ、ビッグライトで巨大化したりするしな。うん。
尺が短いぶんだけ、親子や家族の絆、みたいな米国映画お得意のお説教が少なめで、大人を蚊帳の外に押しやってしまっているところが、子供目線では良いバランスに思えるかもしれないな。
音楽担当ジョン・デブニー。昔からこういうファミリー向けのコメディっぽい作品では良い仕事をしている印象。しかし、超多忙なはずのに、こんなものまでやってるってのは大変だよなぁ。
WOWOWの録画でみた、国内劇場未公開作品。親戚と一緒に避暑地にやってきた少年少女が、地球侵略にやってきた少々間抜けな宇宙人の先遣隊と遭遇し、大人の手を借りずに撃退するためにドタバタのバトルを繰り広げる。
子供たちを主人公にした、ファミリー向け(というか子供向け)のアドベンチャーものというジャンルは、おそらくそれなりに作られているのだろうけれども、なかなか日本の劇場では公開されない今日この頃。名の知れたスターもいなければ、ディズニーとかの冠もないのだから、まあ、そういう扱いもむべなるかな、である。
だけど、これ、そこそこ面白いんじゃないのかね。子供向きだと割り切った甘い作りではあるけれど、86分、お約束事も含めてきっちり楽しませる良心的な作りだと思う。ひまつぶしには悪くないよ。
地球侵略とかなんとかいっているのに片田舎の別荘にやってきて子供たちとバトルを繰り広げる小型で間抜けな宇宙人は、どこか「ケロロ軍曹」かなんかに触発されたんじゃないかと思わせるものがある。また、地球存亡の一大事(本当か?)だというのに、大人はあてに出来なくて、子供たちだけで何事もなかったかのように対処しなければならないという筋立てや、その闘いが屋上から地下室まで、一件の家の中だけで完結するという発想は、藤子F的な裏庭SF風だったりもする。しまいにゃ、ビッグライトで巨大化したりするしな。うん。
尺が短いぶんだけ、親子や家族の絆、みたいな米国映画お得意のお説教が少なめで、大人を蚊帳の外に押しやってしまっているところが、子供目線では良いバランスに思えるかもしれないな。
音楽担当ジョン・デブニー。昔からこういうファミリー向けのコメディっぽい作品では良い仕事をしている印象。しかし、超多忙なはずのに、こんなものまでやってるってのは大変だよなぁ。
2010/12/15
エディ・マーフィの劇的一週間 (2009)
Imagine That (☆☆☆)@WOWOW 録画
WOWOWで放送された国内劇場未公開映画を録画で鑑賞。
1982年の『48時間』で鮮烈な映画デビューをしてからすでに30年近いエディ・マーフィだが、そのキャリアには幾度もの浮き沈みがあるわけだが、ここ数年の低調ぶりはちょっと目に余るものがある。『ドリーム・ガールズ』でアカデミー賞ノミネートされながら受賞できないとわかると憮然とした表情で会場をあとにして業界内で不評を買ったのがケチの付き始めではないか。この間の離婚や子供の認知をめぐるスキャンダルで、鉱脈を見つけつつあった「良き父親」キャラクターが傷ついたのも痛いところだ。
で、本作。これも「父親キャラクター」によるファミリー・コメディ路線の一本である。まあ、仕事一筋で父親失格の男があることをきっかけに娘との距離を縮め、父親としての責任に目覚めるといったよくある話なのだが、久々にちょっと面白い。
エディが演じるのは機関投資家や富裕層を相手にした投資顧問会社のやり手マネージャーだ。創設者が会社を売って引退しようとしているらしいときき後釜を狙うべく奮闘するが、先住民気取りのプレゼンテーションで顧客の心をつかむライバルに遅れをとりがちで焦っている。そんな大事なタイミングで、別れた妻との約束で娘の面倒をみなくてはならないようになる。両親離婚のショックからか、安心毛布を手放さず想像上の友達(imaginary friends)と会話をする娘に手を焼くエディは、仕事に使うドキュメントをめちゃめちゃにされて激怒。ところが、落書きやイタズラに見えたそれは、娘が想像上の友達から聞きだした投資アドバイスで、その的中度合に上司も顧客も度肝を抜かれることになる。
そんなわけでエディは、最初は半信半疑で娘と一緒に毛布を被り、娘が遊ぶ想像上の世界でご神託を聞こうとするようになる。このあたりから、先入観なしに映画を見ていると、この話がどのように展開していくのか、ちょっと想像ができなくなってくる。果たして、毛布をかぶって回転するとそこにはファンタジー世界が広がっているのか?・・・いや、実のところ、映画のミソは、主人公であるエディにも、観客にも、娘が言う想像上の世界や友達が見えるわけではないことだったりする。
自身の出世のために娘を利用していたエディが、どこで父親としての責任を自覚したのか、どんな心境の変化があったのか、肝心なところが丁寧に描かれているとはいえないが、毛布一枚に子供じみた大騒ぎになった挙句、ハっと我に返る瞬間があったのだろうと想像する。
共演する「先住民気取り」のトーマス・ヘイデン・チャーチの怪演、伝説の投資家マーティン・シーンの貫禄がいいね。
WOWOWで放送された国内劇場未公開映画を録画で鑑賞。
1982年の『48時間』で鮮烈な映画デビューをしてからすでに30年近いエディ・マーフィだが、そのキャリアには幾度もの浮き沈みがあるわけだが、ここ数年の低調ぶりはちょっと目に余るものがある。『ドリーム・ガールズ』でアカデミー賞ノミネートされながら受賞できないとわかると憮然とした表情で会場をあとにして業界内で不評を買ったのがケチの付き始めではないか。この間の離婚や子供の認知をめぐるスキャンダルで、鉱脈を見つけつつあった「良き父親」キャラクターが傷ついたのも痛いところだ。
で、本作。これも「父親キャラクター」によるファミリー・コメディ路線の一本である。まあ、仕事一筋で父親失格の男があることをきっかけに娘との距離を縮め、父親としての責任に目覚めるといったよくある話なのだが、久々にちょっと面白い。
エディが演じるのは機関投資家や富裕層を相手にした投資顧問会社のやり手マネージャーだ。創設者が会社を売って引退しようとしているらしいときき後釜を狙うべく奮闘するが、先住民気取りのプレゼンテーションで顧客の心をつかむライバルに遅れをとりがちで焦っている。そんな大事なタイミングで、別れた妻との約束で娘の面倒をみなくてはならないようになる。両親離婚のショックからか、安心毛布を手放さず想像上の友達(imaginary friends)と会話をする娘に手を焼くエディは、仕事に使うドキュメントをめちゃめちゃにされて激怒。ところが、落書きやイタズラに見えたそれは、娘が想像上の友達から聞きだした投資アドバイスで、その的中度合に上司も顧客も度肝を抜かれることになる。
そんなわけでエディは、最初は半信半疑で娘と一緒に毛布を被り、娘が遊ぶ想像上の世界でご神託を聞こうとするようになる。このあたりから、先入観なしに映画を見ていると、この話がどのように展開していくのか、ちょっと想像ができなくなってくる。果たして、毛布をかぶって回転するとそこにはファンタジー世界が広がっているのか?・・・いや、実のところ、映画のミソは、主人公であるエディにも、観客にも、娘が言う想像上の世界や友達が見えるわけではないことだったりする。
自身の出世のために娘を利用していたエディが、どこで父親としての責任を自覚したのか、どんな心境の変化があったのか、肝心なところが丁寧に描かれているとはいえないが、毛布一枚に子供じみた大騒ぎになった挙句、ハっと我に返る瞬間があったのだろうと想像する。
共演する「先住民気取り」のトーマス・ヘイデン・チャーチの怪演、伝説の投資家マーティン・シーンの貫禄がいいね。
2010/10/27
ウィッチマウンテン 地図から消された山 (2009)
Race to Witch Mountain ☆☆☆★ (@WOWOW録画)
劇場で見損なっていたドゥウェイン・ジョンソン(ザ・ロック)主演のディズニー映画がWOWOWで放送されていたので録画鑑賞。ああ、楽しかった。ほんと。
本作、『星の国から来た仲間(1975)』のリメイクだという触れ込みだが、そもそもの原作があるらしく、その作者はアレグザンダー・ケイ。名前に聞き覚えあると思った人も多いだろう。そう、この人、宮崎駿『未来少年コナン』の原作としてクレジットされている「残された人々」の作者なんだね。
今回の映画では、ラスベガスのタクシー運転手をやっているロック様が一応の主人公だ。彼が不思議な少年・少女2人組を客として拾ったことから巻き込まれる、人類存亡をかけたアドベンチャー、という立て付けである。宇宙船や宇宙人の特殊能力を手に入れたい国家組織や、敵対する勢力が送り込んだ刺客から少年・少女を守り、政府組織が宇宙船を隠している要塞基地・ウィッチマウンテンに急げっ!
これ、ファミリー・ピクチャーではあるけれど、その出来栄えはかなりイイ。何がいいと言って、脚本の段取りが巧みで無駄がない。キャラクターの出し入れや活かし方もいい。ユーモアもあれば、ちょっとしたロマンスもあれば、主人公の更生もあれば、平和・環境というメッセージ性まである。こんなに盛り沢山なのにバランスが取れていて破綻していない。
演出のテンポも快調。子供向け・ファミリー向けを意識してか尺の長さは1時間40分程度なのだが、それ故に、非常に密度が高い。気持ちよく突っ走って後味の良い幕切れ。エンドクレジットで垣間見せる「その後」。いや、職人的に巧い。大作感はないけれど、丁寧。こういうのは気持ちイイ。
翻案・脚本のマット・ロペスはアダム・サンドラーの『ベッドタイム・ストーリー』、『魔法使いの弟子』なのでディズニー御用達ライターといったところか。共同脚本のマーク・ボンバックは『ダイ・ハード4.0』とか、トニー・スコット次回作『アンストッパブル』で売り出し中といった感じ?監督はアンディ・フィックマン。
劇場で見損なっていたドゥウェイン・ジョンソン(ザ・ロック)主演のディズニー映画がWOWOWで放送されていたので録画鑑賞。ああ、楽しかった。ほんと。
本作、『星の国から来た仲間(1975)』のリメイクだという触れ込みだが、そもそもの原作があるらしく、その作者はアレグザンダー・ケイ。名前に聞き覚えあると思った人も多いだろう。そう、この人、宮崎駿『未来少年コナン』の原作としてクレジットされている「残された人々」の作者なんだね。
今回の映画では、ラスベガスのタクシー運転手をやっているロック様が一応の主人公だ。彼が不思議な少年・少女2人組を客として拾ったことから巻き込まれる、人類存亡をかけたアドベンチャー、という立て付けである。宇宙船や宇宙人の特殊能力を手に入れたい国家組織や、敵対する勢力が送り込んだ刺客から少年・少女を守り、政府組織が宇宙船を隠している要塞基地・ウィッチマウンテンに急げっ!
これ、ファミリー・ピクチャーではあるけれど、その出来栄えはかなりイイ。何がいいと言って、脚本の段取りが巧みで無駄がない。キャラクターの出し入れや活かし方もいい。ユーモアもあれば、ちょっとしたロマンスもあれば、主人公の更生もあれば、平和・環境というメッセージ性まである。こんなに盛り沢山なのにバランスが取れていて破綻していない。
演出のテンポも快調。子供向け・ファミリー向けを意識してか尺の長さは1時間40分程度なのだが、それ故に、非常に密度が高い。気持ちよく突っ走って後味の良い幕切れ。エンドクレジットで垣間見せる「その後」。いや、職人的に巧い。大作感はないけれど、丁寧。こういうのは気持ちイイ。
翻案・脚本のマット・ロペスはアダム・サンドラーの『ベッドタイム・ストーリー』、『魔法使いの弟子』なのでディズニー御用達ライターといったところか。共同脚本のマーク・ボンバックは『ダイ・ハード4.0』とか、トニー・スコット次回作『アンストッパブル』で売り出し中といった感じ?監督はアンディ・フィックマン。
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