Charlie Bartlett (2008) ☆☆☆★(@WOWOW録画)
WOWOWの放送を録画して、『チャーリーバットレットの男子トイレ相談室(2008)』 を見た。日本でも劇場公開されていたらしいのだが、渋谷のなんとかとか、シネパトスとか。うーん、いつのまにか、そういった場所、そういった規模でしか公開されない作品にはすっかり疎くなってしまった。昔は東銀座まで『ズーランダー』を追いかけていったりしたもんなんですが。
ジョン・ポール、などという、どっかの法王ですか?っていうような名前の監督が、『スター・トレック』の新チェコフであり『ターミネーター4』の若いカイル・リースであるところのアントン・イェルチン主演で撮った、一風変わったオリジナリティあふれるハイスクールもの、これがなかなか佳作。
お金持ちのお坊ちゃんである主人公チャーリー・バートレットは、周囲からの「人気」を得ることに至上の価値を見出している。偽造免許証作りで人気を集めるが、それで名門プレップスクールを放校処分になってしまう。転入した公立学校は、まるで彼に不釣合いな場所に見えたが、あるとき、自分に処方された抗精神薬でハイになったことから、抗精神薬の転売&悩みごと相談の真似事を始め、カリスマ的な人気を確立してしまう。校長の娘と仲良くなるところまでは良かったが、抗精神剤で自殺を図るクラスメイトが現れて問題化、さらに、学校内に設置された監視カメラに反発を強める生徒らの首謀格に祭り上げられて、ひと悶着が起こる。
人気を得るより大事なことがあるだろう、と問われ、具体的に何があるんだ?と問い返す主人公。(米国の)高校生活で、周囲の注目を集めることの切実的な価値は、周囲から阻害された孤独の中で自殺を図ろうとする生徒との対比でうまく描かれていて、ティーンの現実と誠実に向き合おうとするジョン・ヒューズ以来の良い伝統に則った作品になっている。そんな文脈で言えば、ある種の悪知恵で大人を出し抜き、小気味良く物事を運んでみんなの人気者というあたりは、『フェリスはある朝、突然に』の楽しさに通じている。アントン・イェルチンの童顔キャラは、やっぱりマシュー・ブロデリック風味だと思う。
しかし、この主人公はフェリスほどに徹底的に楽天的で陽性のキャラクターではない。父親不在、精神的におかしい母親という状況で、彼自身が背負い込んだ問題、生きる困難さを抱えている。また、この映画が描く「大人」は、「若者を理解できない大人という記号」ではない。本作で「大人」を代表するのはロバート・ダウニーJr.演ずる校長だが、ある意味、主人公と対等の人間として描かれ、主人公に大切な教訓を教えると同時に、醜態も晒す。このあたりの視点の置き方は、ウェス・アンダーソンの『天才マックスの世界』と響きあう。本作で、終盤に向けて「演劇」という要素を持ち込んできた脚本は、「マックス」を意識しているように思えるのだがどうだろう。
その、「演劇」というのが、劇中、問題視されたり、いや、高校生はこう言うのこそを見たいんだ、と主張したりするほどのものに見えないのがご愛嬌。ここできちんと盛り上げられたら、文句なく☆☆☆☆級だったんだけどな。
0 件のコメント:
コメントを投稿