最後の最後、微妙なところで暗転して観客の想像力を刺激するセンスがいい。いや、すっきりしないから嫌だという人もいるんだろうけどさ。
娯楽大作の顔をしてはいるが、実態は全編やりたい放題やらかしたかなりの野心作で、サマー・ブロックバスターらしからぬ中身の濃さが見所。観客の何割かはついてこられずに脱落してしまうのでは?
他人の頭(夢)の中に侵入してアイディアを盗むプロフェッショナルたちが、それとは逆に、ターゲットとする人物にアイディアを植えつける難易度の高いミッションに挑む。それぞれ専門性の高いメンバーが、ミッション遂行のために自分の任務に邁進するという筋立ては、ちょっと「スパイ大作戦」的で面白い。こういう話は基本的に大好きだ。
レオナルド・ディカプリオ演じる主人公は、何の偶然だか彼の近作『シャッター・アイランド』と同様、妻や家族に対する罪悪感や深い喪失感を抱えた人物。彼の内面のドラマも心に触れるものがあるが、ディカプリオの演技が少し生真面目で、結局のところ毎回同じに見えてしまうのは欠点。ちなみに、彼のトレードマークは眉間のしわは12歳のときに出演した『クリッター3』からずっと同じだ(爆)
主たる舞台が「夢」の世界といっても、ターゲットとした相手をトラップにかけるために設計された多層構造の夢である。「夢の中の夢」では階層を重ねるごとに体感的な経過時間がどんどん長くなるという設定が実に面白い。この複雑なルールを映像にする力技が見所で、クライマックスに至っては時間の流れ方が異なる複数の階層での出来事をクロスカットで編集してみせるなどというトリッキーな演出が炸裂、まさにクリストファー・ノーランの面目躍如といったところ。ここのところは素直に面白かった。
山岳スキーアクションが露骨にボンド映画オマージュだなぁ、と思って見ていたら、本人がボンド映画をやりたいという思いを語っているようで。同じようにボンド映画をやりたいという思いが『インディアナ・ジョーンズ』になるのがルーカス&スピルバーグで、こういうクールだけど生真面目な映画になるのがノーランなんだぁ。
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