The Goods: Live Hard, Sell Hard (☆☆)@WOWOW録画
進退極まった中古車ディーラーの助っ人として雇われたプロのセールス・チームが先頭に立って、独立記念日の週末にあの手この手で在庫車を売りさばこうとするドタバタ・コメディだ。
作り手のインスピレーションは、ロバート・ゼメキスのデビュー作である中古車屋ドタバタ・コメディ『ユーズド・カー』と、デイヴィッド・マメット原作のセールスマンもの『摩天楼を夢みて(グレンギャリー・グレンロス)』にあるという。ジェレミー・ピヴェン主演(←めずらしい)、ヴィング・レームス、ジェームズ・ブローリン、ケン・チョンなど。製作にウィル・フェレルが絡んでいるのだが、映画のノリはそちらな感じで、かつ、カメオ出演もしている。
米国における「中古車のセールスマン」は、信用出来ない人間の代名詞のひとつ。口八丁手八丁で「レモン(欠陥車)」を売りつけ、売った者勝ちというイメージだな。そんな中古車ビジネスを舞台にしてはいるが、この映画、基本的に中古車セールスマンを揶揄したり貶めるものではない。基本的フォーマットは、万年負け組が奮起して結果を残すという、スポーツ物などに典型的なパターンの話であり、それぞれの立場でそれぞれに頑張っている、少し変わった人間たちへの賛歌である。そこまですっきり爽やかで気持ちよい映画ではないけどな。
笑いのネタも、半分面白く、半分不発。コメディ好きの自分でも、「やっすいマチネー料金で見ている分には許容できる程度」の映画だなと思うんだから、出演者も地味なコメディでそういう出来映えであれば未公開街道まっしぐらも致し方ないか。
ところで、主人公が、現場の士気を高めるために朝のミーティングで「パールハーバー」を例えに出したら、感情が昂ったセールスマンたちが(『ハング・オーバー!』や『トランスフォーマー3』で有名になったアジア系のコメディアン)ケン・チョンをタコ殴りにするというギャグがあった。ケン・チョンの役は日系ですらない、というオチがつく。これ、ちょっと嫌だなぁ、笑えないなぁ、と思って見ていたら、案の定、「差別的」だと日系人のコミュニティが抗議したらしい。
コメディのネタにケチをつけたり、あんまり表現を自粛したりするのは無粋だと思っているのだが、やってよい表現とダメな表現の境界線はなかなか難しい問題だ。
上記についても、毎朝毎朝、「ホロコースト」を例えに出してドイツ系をボコスコにし、「アラモ」を例えに出してネイティブ・アメリカンをズタボロにし、「911」でアラブ系を、「KKK」ネタで有色人種が白人全員を叩きのめし、と反復したうえで、「21世紀になっても進歩のない連中だな」くらいの批評的な台詞でオチをまとめれば、アリだったかもしれない。
要は、作り手が、そこで行われている行為を間違ったことであると認識していることを明確に示しているかどうかなんじゃないか。もちろん、ギャグにしているということは、それが「政治的に」間違っているという認識は示しているのに等しい(ので、あまり目くじらをたてたくない)が、本音ではOKと思っているようにも受け取れるから気分が良くないし、反発も出てくるのだな。あと、特定の人種なり何なりだけをターゲットにするのでなく、様々な事象の中で相対化されているほうが批評性につながると思うんだがどうだろうか。"Avenue Q" の歌詞じゃないが、「誰もが少しだけレイシスト♪」なノリになっちゃえば、不謹慎とはいえ、差別的だとは感じないものだ。
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